ハワイは常に日本人に最も人気のある旅行先であると同時に、富裕層が住むイメージから海外の不動産投資の中で、ハワイの物件に関心を持つ人はとても多いです。
しかし、ハワイの不動産は利回りが低いため投資先として失敗するとも言われています。
実際に物件価格の高騰に伴い、ハワイの利回りは低下しています。
また、アメリカはインフレで物価も上昇していますので、連動するように人件費も上がっています。
ハワイも例外ではなく、管理会社に支払う費用もかさみますので、実質的な利回りはさらに低くなります。
それでは、ハワイの不動産は利回りが低いのに、なぜ人気があるのでしょうか?
その理由は、ハワイの不動産は長期的に見て価格が下落するリスクが小さく、今後も肩上がりで上昇すると期待されているからです。
新型コロナウイルスの影響により、2020年上半期にハワイの不動産市場は大きく低迷しましたが、それでもコロナの影響をアメリカ本土ほど受けなかったことは、ハワイの不動産市場の強さを何よりも証明した結果となりました。
そこで本記事では、ハワイへの不動産投資について、利回りを中心に解説します。
また、コンドミニアム投資の注意点もご紹介するので、ハワイへの不動産投資にご興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
ハワイ不動産の利回りの実態
ハワイの不動産市場は、一般的に低い利回りが見込まれます。
日本国内では、都心部における築浅のワンルームマンションを投資用不動産として購入する場合、表面利回りが5〜6%という物件が一般的ですが、ハワイの不動産市場では2〜4%という利回りの物件も珍しくありません。
この低い利回りは、ハワイが世界的なリゾート地であることに起因しています。
多くの投資マネーがハワイに流れ込んでおり、不動産市場では激しい競争が展開されています。
その結果、物件価格が高騰しており、高額な物件価格に対して利回りが低下する傾向があります。
このような状況から、ハワイの不動産投資においては高い利回りを期待することは難しいとされています。
不動産投資家は、利回りだけでなく、将来的な資産価値の成長やリスクの分散も考慮に入れる必要があります。
トランプ・インターナショナル・ホテル・ワイキキの利回り
トランプ・インターナショナル・ホテル・ワイキキ(以下、トランプ)は、第45代アメリカ合衆国大統領であるドナルド・トランプ氏が所有する五つ星ホテルです。
日本ではまだ馴染みが薄いかもしれませんが、トランプはホテルコンドミニアムと呼ばれる形態の不動産です。
建物内にはフロント設備が整備されており、購入した所有者は自らが所有する部屋を一泊単位でホテルとして運用することが可能です。
一般的な不動産投資とは異なり、トランプの所有者は1ヶ月間の固定賃料を得ることはありません。収益は部屋の稼働率に依存し、そのため毎月の収益は変動します。
ただし、ゴールデンウィークやお盆、年末年始などのハイシーズンにおいては、部屋の稼働率が高まる傾向があり、高収益を期待することができます。
トランプ・インターナショナル・ホテル・ワイキキの利回り | |
レンタル収入 | 42,147.25ドル |
管理費 | ▲11,388ドル |
固定資産税 | ▲8,124ドル |
電気代 | ▲960ドル |
火災保険料 | ▲400ドル |
手取り合計額 | 21,275.25ドル |
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トランプの中で、最も収益性の高い部屋は、オーシャンビューの約50㎡のStudio(ワンルーム)タイプで、販売価格は1,050,000ドルです。
この部屋の年間のレンタル収入は42,147.25ドルであり、表面利回りは4.01%に達します。
しかし、トランプは通常はホテルとして利用されるため、フロントや清掃のスタッフの人件費が管理費としてかかります。
年間の維持経費だけでも20,872ドル(管理費が949ドル/月、固定資産税が677ドル/月、電気代が80ドル/月、火災保険料が33.33ドル/月)もかかりますので、諸経費を控除したあとの収入は21,275.25ドルまで減少します。
この金額を販売価格で割戻しますと、実質利回りは2.02%になります。
ハワイの不動産市場は、固定資産税などの費用が日本とは比較にならないほど高いため、国内の不動産投資と比べて、表面利回りと実質利回りの乖離が大きくなる傾向があります。
低利回りにも関わらずハワイが不動産投資家に選ばれる理由
ハワイへの不動産投資は、国内と比較して利回りが低く感じられるかもしれません。
しかし、日本国内でも麻布・青山・赤坂・六本木などの「3A+R」エリアでは、3〜4%の表面利回りが一般的であり、高額な投資としては受け入れられます。
ただし、ハワイの不動産の場合、日本以上に管理費や固定資産税などの維持費が高額であるため、実質利回りは約2%程度にまで低下します。
それではハワイの不動産が日本人に人気を集める理由は何でしょうか。
過去、カナダ人が最も多くの購入者を占めていましたが、2014年に日本人がトップに立ち、その後も急速に増加しました。
年度 | 国籍 | 順位 | 取引件数 | 取引額 |
2013年 | 日本 | 2位 | 249件 | 1億8900万ドル |
2014年 | 日本 | 1位 | 291件 | 2億7800万ドル |
2015年 | 日本 | 1位 | 308件 | 2億3300万ドル |
2016年 | 日本 | 1位 | 581件 | 7億5300万ドル |
2017年 | 日本 | 1位 | 438件 | 5億7800万ドル |
2018年 | 日本 | 1位 | 610件 | 7億4600万ドル |
2019年 | 日本 | 1位 | 340件 | 3億6440万ドル |
2020年 | 日本 | 1位 | 131件 | 1億3000万ドル |
2021年 | 日本 | 1位 | 225件 | 2億6530万ドル |
2022年 | 日本 | 1位 | 231件 | 2億5570万ドル |
2023年 | 日本 | 1位 | 292件 | 3億4660万ドル |
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外国人によるハワイ不動産投資は、コロナ禍により一時的に減少しましたが、制限の緩和とともに再び増加しました。
日本人がハワイの不動産市場に魅力を感じる最大の理由は、ハワイの不動産市場の安定性です。
コロナ禍からの回復だけではなく、それ以外にもハワイの不動産市場はリーマンショックなどの際にも迅速に回復し、安定した成長を続けています。
さらに、ハワイの不動産市場はアメリカ本土からの需要も高く、地理的な要因もあって西海岸の人々からの人気があります。
実際、外国人の投資家が減少した2021年は販売された物件の約20%がアメリカ本土からの購入者でした。
ハワイの不動産市場は、一部の購入者が市場から離れても、すぐに新たなプレイヤーが参入して市場を安定させる強みがあります。
リーマンショックの際は、数ヶ月で景気後退から回復し、不動産価格は右肩上がり推移しました。
つまり、ハワイの物件を保有することは、安定したドル建ての資産を持つことと同等の意味を持ちます。
ハワイへの不動産投資は低利回りで失敗すると言われることが多いですが、むしろハワイの不動産市場の規模の大きさや安定性、またドル建ての資産を保有できる点において、日本人にとって低利回りというデメリット以上に、ハワイへの投資を推し進めるメリットが大きいです。
ハワイ不動産投資のエリア別分析と評価
2008年以降、ハワイの不動産市場において、日本人を含む幅広い国籍の外国人投資家から注目を集めています。
特に、ホノルル市内の高級コンドミニアム、オアフ島のカハラ地区、マウイ島、ハワイ島、そしてカウアイ島のリゾート地域において、高級一戸建ての購入が目立ちます。
国籍別に見ると、日本人がオアフ島を、カナダ人がマウイ島を好む傾向があります。
そのため、今回は日本人に人気の高いオアフ島にフォーカスし、不動産投資に最適なエリアをご紹介いたします。
ワイキキ(Waikiki)
ワイキキはオアフ島ホノルルにおける最大のリゾートエリアであり、その中心に位置するカラカウア通りやクヒオ通りには、数多くのリゾートホテル、コンドミニアム、ショッピングセンター、飲食店が軒を連ねています。
世界中から年間を通じて観光客が訪れる中、その多くは日本からの旅行者です。
このワイキキのエリアでは、日本人投資家によって約800億円もの不動産投資が行われており、その規模は東京都港区の約20k㎡にも満たない僅か約9k㎡のエリアにおいて、巨額な投資が行われています。
不動産価格の安定性や、新規不動産建設用地の希少性からも、ワイキキは今後もその価値が高まることが期待されています。
ワイキキを代表する高級コンドミニアムには、トランプ・インターナショナル・ホテル・ワイキキ(2009年竣工)やザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキ(2016年竣工)があります。
ココアコ(Kaka’ako)
カカアコは、日本人観光客に人気のアラモアナショッピングセンターに隣接した、便利なエリアです。
アラモアナショッピングセンターまで車で約5分、ワイキキまで約10分という好立地に位置しています。
このエリアは、ハワイで最も土地開発が進行しているエリアの一つです。
アメリカの大手デベロッパーのザ・ハワード・ヒューズ・コーポレーションが率いるプロジェクト、通称「ワードビレッジ」は、約60エーカー(約7万3千坪)にも及ぶ大規模開発を進めています。
このプロジェクトはすでに2012年頃からスタートし、20年以上かけて15棟の高級コンドミニアムや大型商業施設、オフィスなどが建設される予定です。
すでに「ワイエア(Waiea)」「アナハ(Anaha)」「アエオ(A’eo)」「ケキロハナ(Ke Kilohana)」「アアリイ(’A’ali’i)」「コウラ(Koula)」などのコンドミニアムが完成していますが、ワードビレッジは街全体を改善する大規模プロジェクトであり、さらなる利便性向上が期待され、住みやすいエリアに変貌していくでしょう。
このため、カカアコの不動産の価格上昇も期待されています。
ゴールドコースト(Gold Coast)
ゴールドコーストは、ワイキキとダイアモンドヘッドの間に広がる海岸沿いのエリアです。
日本人にはあまり耳慣れないかもしれませんが、実際にはゴールドコーストという地名は存在せず、ホノルル動物園を過ぎてカイマナビーチホテル周辺までのエリアを指す愛称です。
このエリアには、1950年代から1960年代にかけて建てられたコンドミニアムがあります。
スーパーやレストランが少なく、やや不便なエリアですが、ビーチまでの距離が近く、海を望む部屋からは素晴らしい眺めを楽しむことができます。
現在はセットバック法の制定により、海から一定の距離を保持して建物を建てる必要があるため、今後ゴールドコーストにあるような物件と同じ条件での新築物件の建設はありません。
そのため、ゴールドコーストの物件は築年数が経過していても、希少価値が高く、人気があります。
また、所有権の形態として、日本にはないCo-op(コープ)と呼ばれるものが存在します。
これは、管理組合が発行するコンドミニアムの株式を通じて居住権を得る形態です。
管理組合は、コンドミニアムに居住者を守るために規則が制定しています。
規則が厳しいコンドミニアムの場合、管理組合との面接(英語)や身辺調査、居住してから数年間は賃貸に出すことができないなどの条件が盛り込まれています。
このような背景から、ゴールドコーストで完全所有権の物件が出ると、日本人だけでなく現地の人々も含めて争奪戦が起こります。
ハワイ不動産投資の注意点
ハワイへの不動産投資は、比較的リスクが少ないとされていますが、不動産価格、利回り、ローンの仕組み、不動産会社とのコミュニケーション、税金、為替など、国内の不動産投資と比較して、注意すべきリスクは幅広く存在します。
不動産価格が高い
ハワイの不動産市場は、アメリカの他の州と比較して高額な販売価格が特徴です。
過去5年間で、ハワイの不動産価格は安定的に上昇しています。
2020年1月時点でハワイの不動産の販売価格の中央値が50万ドル台だったのが、現在は70万ドルを突破し、短期間で大きく価格が上昇しています。
2024年4月、ハワイの住宅価格は昨年比14.1%上昇し、中央値784,700ドルで販売されました。
販売された住宅数は前年比11.3%増加し、販売された住宅数は1,139軒で、昨年4月に販売された住宅数1,023軒を上回りました。
売り出しから成約までの平均売却期間は74日でした。
また、アメリカ全土を見ても、ハワイより不動産価格が高いのはカリフォルニアだけで、ニューヨークやフロリダよりも販売価格が高騰していることがわかります。
ハワイの不動産市場は、長期的に販売価格が右肩上がりに伸びているため、キャピタルゲインや資産価値の向上を重視した投資に最適です。
一方で、インカムゲインを重視する場合は、ハワイにこだわることなく、他のエリアも検討することをおすすめします。
ハワイの不動産市場の特性を理解し、他の選択肢と比較しながら、最適な投資先を見つけることがポイントです。
利回りが低い
ハワイの不動産市場では、販売価格の急激な上昇に伴い、表面利回りは約4%程度にとどまっています。
実質利回りも国内の不動産投資と比較して低くなっています。
ハワイは東京の一等地と同様に、物件価格が高く、管理費や固定資産税などの維持費用も日本よりもはるかに高額です。
そのため、利回りを期待しての不動産投資はおすすめできません。
ただし、ハワイ在住で英語が得意な方にとっては、アメリカの賃貸市場では個人間の契約も頻繁に行われており、自身で賃貸物件の管理を行うことで賃貸管理会社に支払う約30%の手数料を削減し、利回りを改善することが可能です。
一方で、日本在住の方や英語でのコミュニケーションに自信のない方にとっては、時差による緊急対応の難しさや日米間のビジネスや文化の違いによるトラブルや誤解を避けるために、賃貸管理会社に委託することが望ましいでしょう。
フルローンでの購入は不可能
ハワイの不動産を購入する際、少数ながらも日本と同じようにローンを利用することができます。
日本とハワイの両方で不動産ローンを組むことができます。
特に、ハワイ最大手のファーストハワイアンバンクはおすすめです。
日本人のローン担当者が在籍し、全て日本語で手続きが可能です。
ただし、ローンの融資限度額は物件評価額の50%までという条件があります。
また、物件にフルキッチンが完備されていることもローンを組むための条件の一つとなっています。
国内の金融機関では、韓国資本のSBJ銀行がハワイの不動産に対する融資を提供しています。
SBJ銀行は東京港区に本店を置き、名古屋、大阪、福岡にも支店があります。
こちらもローンの融資限度額は同様に50%で、自宅やセカンドハウスであることが条件です。
いずれの金融機関でも融資限度額は最大で50%ですので、フルローンでの購入は不可能のため、ローンを利用できても多額の自己資金の準備が必要となりますので、注意してください。
不動産会社とのコミュニケーション
日本とハワイの間には19時間の時差があります。
時差が大きいため、不動産会社とのコミュニケーションが円滑に進まないことがあります。
また、アメリカ人のエージェントは日本語でのコミュニケーションができない場合も多いので、英語に自信のない方は必ず日本人が在籍する不動産会社をご利用ください。
これは物件を購入する時だけではなく、購入後の管理を委託する賃貸管理会社との付き合い方でも同じです。
税金と為替のリスク
ハワイは物価が高いので、他のアメリカの州と比べても税金も高いです。
固定資産税も日本とは比較にならほど高い上に、VATと呼ばれる付加価値税もかかります。
税金の種類や税率については、不動産を購入する前に必ず不動産会社に確認すべき重要事項です。
また、不動産を売却した場合の売却益に対して、譲渡所得税が課税されます。
ハワイの不動産を売却した場合、最初の納税地は不動産があるハワイになりますが、日本人の場合、最終的に日本で確定申告を申請して、日本の税法に従って、譲渡税を申告・納付する必要があります。
日本とアメリカは、租税条約を締結しているので、二重に課税されることはありませんが、ハワイでの納税額が少なければ日本で追加納税が発生します。
ハワイの不動産を売却する時は、取引がドル建てで実施されますが、日本で申告をする場合は、売却したその日のドル円のレートが適用になります。
購入時よりも円安が進行しているタイミングで売却すると、売却益が大きくなるので、それに伴い税金も高額になるので、注意が必要です。
さらに、ハワイの不動産を売却したら、HARPTA(ハワイ州不動産税法)とFIRPTA(外国人不動産投資税法)という源泉徴収税をハワイ州とアメリカ合衆国連邦税務署に納める義務があります。
源泉徴収税が売買価格の22.25%に設定されていますので、1,000,000ドルで売却した場合、222,500ドルも源泉徴収されてしまいます。
翌年に確定申告を行うことで、必要以上に徴収された分に関しては還付がありますが、申請後すぐに還付されるわけではなく、また具体的に還付までの日数が決まっているわけではないのですが、平均で6ヶ月〜12ヶ月後に還付されることがほとんどです。
不動産を売却してから、それなりの期間が経過してから還付されるので、売却資金をあてに次の投資を実行するならば、売却手続き完了後、22.25%の源泉徴収税を差し引いた金額しか手元にないことを頭に入れておく必要があります。
バケーションレンタルに関する規制
ハワイは世界有数の観光地であるため、住宅やコンドミニアムを1ヶ月程度の短期滞在者に貸し出すバケーションレンタルも有効です。
そのため、バケーションレンタル用に物件を購入して、民泊のような形で運用する人も増えています。
しかし、2022年4月にバケーションレンタル規制法案の41号が法案化されたことによって、リゾート地以外でのコンドミニアムの賃貸期間が最低30日間から90日に変更されてしまいました。
この背景には、バケーションレンタルの利用者による騒音や近隣住民とのトラブルが問題化し、規制が強化されることになりました。
短期間の貸し出しが不可能になったので、バケーションレンタルを活用した不動産投資をご検討されている方は、規制法案の対象外となるリゾート地を選ぶか、90日以上の貸し出しでも需要が見込める物件を選ぶ必要があります。
まとめ
本記事では、ハワイへの不動産投資の利回りを中心に、おすすめエリアや注意点についても解説しました。
ハワイへの不動産投資は、低利回りになることが多いですが、長期的に価格が上昇しているので、キャピタルゲインや資産性を重視した投資に最適です。
しかし、ローンの仕組みや不動産会社とのコミュニケーション、税金や為替、法律など、国内の不動産投資と比べて複雑で、注意すべき点が多岐に渡ります。
最後になりますが、本記事がハワイへの不動産投資のご検討の一助になれば幸いです。