東京都内のマンションの平均価格は直近で約1億円に達し、多くの家庭にとって重要な選択肢となっています。
世帯年収が1400万円を超える「パワーカップル」と呼ばれるダブルインカム世帯を中心に、勤務先に近い都心やその近郊でのマンション購入が注目されています。
特に、通勤の負担が軽減される湾岸エリアや武蔵小杉で供給されているタワーマンション(以下タワマン)への関心が高まっています。
一方で、タワマンという住形態そのものに対して、疑問の声も出始めています。
筆者は、2018年に武蔵小杉のタワマンを購入しました。
しかし、2019年10月に発生した台風19号の影響で一帯は大規模に冠水し、一部のタワマンでは浸水被害により地下の電気設備が故障するなどの被害が発生しました。
この頃から、タワマンは災害に脆弱なのではないかという疑問が多く出ました。
そこで今回は、実際に武蔵小杉のタワマンを購入した筆者が、タワマンのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
また、その上で、武蔵小杉のタワマンを買って後悔した理由も紹介します。
これからタワマン購入を検討している方々にとって、有益な情報となることを願っています。
タワマンとは?
武蔵小杉のタワマンに関する筆者の実体験をご紹介する前に、そもそもタワマンとは何なのでしょうか?
日本では、一般的に高さ60メートル以上、または20階建て以上の建物をタワマンと呼びます。
これは法律や規制による明確な定義ではなく、不動産業界や一般的な認識での基準です。
構造は鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造などの堅牢な構造で建設されています。
日本初のタワマンは埼玉県に位置する与野ハウスです。
与野ハウスは1976年に建設され、21階建て、総戸数463戸の大規模なマンションとして話題を呼びました。
このプロジェクトは、当時の日本における高層住宅の先駆けとして注目され、タワマンという新しい住まいの形を広く知らしめました。
その後、タワマンの開発は東京都内でも急速に進展しました。
特に1997年には、西新宿の再開発プロジェクトの一環として、西新宿パークサイドタワーが建設されました。
この20階建てのタワマンは、都心における高層住宅の新たな象徴となり、都市生活の利便性と快適性を高めるための重要な役割を果たしました。
中央区には、東京オリンピックの選手村として有名になった「晴海フラッグ」が位置し、多くのタワマンが立ち並んでいます
このエリアの開発は1998年に始まり、現在も継続的に進展しています。
2002年には、港区汐留駅周辺でタワーマンション建設がピークに達しました。
特に注目されたのが、総戸数1000戸を誇る「東京ツインパークス」の建設です。
このプロジェクトは、タワマンブームの象徴として広く認識され、都心の高層住宅市場に大きな影響を与えました。
これらの開発は、都市生活の利便性と快適性を追求する多くの人々に支持され、現在も高い人気を誇るエリアとなっています。
タワマンはどこにあるのか?
現在、東京23区には400棟以上のタワマンが建設されており、その総戸数は13万戸に達します。
23区外も含めた東京都全体では500棟近く、さらに神奈川県、埼玉県、千葉県を含む首都圏全体では700棟以上のタワマンが存在します。
特に注目すべきは、港区と江東区です。
港区には70棟、江東区には60棟以上のタワーマンションがあり、この2つの区だけで首都圏のタワーマンションの約20%が集中しています。
港区では、東京ツインパークスをはじめ、赤坂、麻布、青山の「3A」エリアや六本木、白金、高輪など、多くの高級タワーマンションが立ち並びます。これらのエリアは、高い利便性とステータスの象徴として人気があります。
一方、江東区では豊洲、有明、東雲などの湾岸エリアにタワマンが集中しています。
2000年以降、総戸数1000戸以上の大規模物件が次々と建設され、日本屈指のタワマン密集地帯となっています。
江東区はもともと工業地帯や埋立地で土地価格が安く、港区や千代田区と比較してリーズナブルな価格でタワマンを購入できることから人気です。
また、筆者が住む武蔵小杉も多くのタワマンが建設されているエリアです。
現在は18棟のタワマンが建設されています。
武蔵小杉は、成田エクスプレスの停車駅で成田空港まで直通アクセスが可能であり、千代田区や中央区には少ないファミリー向けの商業施設やレストランが多く、子育て世代のサラリーマンに人気があります。
しかし、2019年に台風19号の影響で一帯が大規模に冠水し、一部のタワーマンションでは浸水被害により地下の電気設備が故障するなどの被害が発生したことから、災害に対する脆弱性も指摘されています。
実際に武蔵小杉のタワマンを購入した体験談
筆者は2018年に武蔵小杉にあるタワマンの一部屋を購入しました。
2014年から2023年までの日本の新築マンションの平均価格の推移を以下にまとめました。
データは主に首都圏を中心としていますが、全国的な傾向としても参考になります。
年度 | 全国平均(前年比) | 首都圏平均(前年比) |
2014年 | 4,290万円 (+5.1%) | 5,110万円 (+5.1%) |
2015年 | 4,530万円 (+5.6%) | 5,270万円 (+3.1%) |
2016年 | 4,590万円 (+1.3%) | 5,410万円 (+2.7%) |
2017年 | 4,680万円 (+2.0%) | 5,570万円 (+3.0%) |
2018年 | 4,760万円 (+1.7%) | 5,830万円 (+4.7%) |
2019年 | 4,690万円 (-1.5%) | 5,970万円 (+2.4%) |
2020年 | 4,850万円 (+3.4%) | 6,140万円 (+2.8%) |
2021年 | 5,040万円 (+3.9%) | 6,230万円 (+1.5%) |
2022年 | 5,300万円 (+5.2%) | 6,380万円 (+2.4%) |
2023年 | 5,520万円 (+4.1%) | 6,580万円 (+3.1%) |
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2014年当時、全国の新築マンションの平均価格は4,290万円でしたが、2018年には4,760万円にまで上がりました。
そして現在は5,520万円 にまで高騰しています。
当初は渋谷区や港区のタワマンを探していましたが、都心のタワマンは手が届かない価格になっていました。
そのため、渋谷区や港区へのアクセスが良いことを条件に周辺エリアのタワマンを探した結果、武蔵小杉の雰囲気を気に入り、購入を決意しました。
武蔵小杉は神奈川県川崎市中原区に位置し、本電気(NEC)玉川事業場や三菱ふそう川崎工場、武蔵中原駅近隣の富士通本店・川崎工場などは現在も稼働中ですが、一部の工場は閉鎖または移転し、タワマンや商業施設に再開発された例も少なくありません。
現在、武蔵小杉には20棟のタワマンが建っています。
全国でも有数のタワマン密集地であり、さらに今後も新たにタワマンが建設される予定です。
それでは、実際に武蔵小杉のタワマンを購入した筆者だからこそわかるメリットとデメリットをご紹介します。
タワマンのメリット
以下は筆者が考えるタワマンのメリットです。
1. 交通アクセスが良い
タワマンに住む最大のメリットは、交通アクセスの良さです。
地域のランドマークになるタワマンは、通常、駅近くに建設されます。
近年では、駅直結のタワマンも増えています。
筆者が暮らす武蔵小杉も、駅まで徒歩5分圏内のタワマンがほとんどです。
また、東急東横線や都営三田線、JR南武線など複数の路線が通っており、主要ターミナル駅への乗り換えがスムーズです。
成田エクスプレスの停車駅でもあるため、成田空港へのアクセスも便利です。
2. セキュリティが充実している
タワマンはセキュリティが充実しており、家族がいる方にとって安心感があります。
武蔵小杉のタワマンでは、コンシェルジュが朝8時から夜20時まで常駐し、管理人が防災センターの見回りを定期的に行っています。
防犯カメラの設置も行われており、安全面に配慮されています。
3. 周辺施設が充実している
タワマンの建設により、周辺施設が充実します。
武蔵小杉の場合、徒歩5分圏内にはスーパーマーケットやレストランなど生活に必要な施設が揃っています。
大規模物件であれば、さらに多様な施設が整備されます。
タワマンのデメリット
次に、タワマンのデメリットを紹介します。
1. エレベーターや駐車場の待ち時間が長い
タワマンでは、エレベーターや駐車場の待ち時間が長いことがあります。
特に通勤時間帯は混雑しやすく、朝のラッシュ時はエレベーターの利用が困難なことがあります。
また、機械式駐車場の場合、週末などは待ち時間が長くなることがあります。
2. 災害時にエレベーターが停止する
災害時には、非常用の電源設備があっても一時的にエレベーターが停止することがあります。
高層階に住んでいる場合、階段を利用する必要があるため、特にご年配や小さな子供がいる方にとっては負担となります。
3. 眺望の良さにすぐに飽きる
高層階のタワマンは美しい眺望を楽しむことができますが、長期間住んでいると眺望に対する関心が薄れることがあります。
初めは魅力的に感じられる眺望も、時間が経つと飽きてしまうことがあります。
4. 共有施設に価値はない
タワマンには多くの共有施設がありますが、実際に利用される頻度は低いです。
フィットネスルームやパーティールームなどの施設はあると便利ですが、利用する機会は少ない傾向にあります。
それにもかかわらず、これらの施設の維持や管理には高いコストがかかります。
そのため、共有施設にはあまり価値がないと感じることがあります。
5. 売却や賃貸に出す場合ライバルが多い
タワマンは総戸数が多いため、売却や賃貸に出す場合、競合物件が多く存在します。
同じマンション内の他の部屋が競合することが一般的です。
売却価格や賃料が他の部屋に影響されやすく、競争が激しい状況です。
特に近年は条件が似たようなタワマンが増えており、ライバルが増えています。
武蔵小杉のタワマンを買って後悔した理由
タワマンへの憧れは多くの人にとって共通しており、かつては筆者もその一人でした。
確かに、タワマンに住むことには様々な恩恵があります。
実際に駅近の利便性やセキュリティの充実、そしてステータスの向上など、筆者もその利点を享受してきました。
しかし、一方でタワマンに住むことは容易ではありません。
エレベーターや駐車場の待ち時間、そして使わない共有施設の維持費用や積立修繕金にはイライラすることもあります。さらに、
これらの費用は高額であり、負担となります。
また、タワマンは災害に対して脆弱です。
日本の自然災害の多さを考えると、高額な住まいであるタワマンに住む際には、少なくとも筆者の住む武蔵小杉のタワマンはあまりにも脆弱だと感じます。
地盤が緩く、工場が多い地域では、地盤の状況が災害にさらされやすく、被害を受けるリスクが高まります。
大きな地震や台風が発生した場合、タワマンには以下のような被害が想定されます。
- 地下に設置された電気系統や排水設備が停止し、住民に影響が出る。
- エレベーターが停止し、高層階の住民も階段を使用して移動する。
- 免震構造を採用しているため、大きな台風により震度3程度の揺れが発生する。
- 地下の駐車場やトランクルームが水害に遭い、被害を受ける。
- 河川が近い物件では、川の水位が上昇し、逆流することによって排水管に被害を受ける。
これらの被害は、武蔵小杉のタワマンのどこかで、すべて経験されたことがあります。
さらに、新型コロナウィルスのような感染症は、タワマンにとっても大きな脅威です。
多くの住民が利用する共有施設やエレベーターは、ウイルスの感染リスクが高まる場所です。
まとめ
本記事では、実際に武蔵小杉のタワマンを購入した筆者が、タワマンのメリットとデメリットについて解説しました。
筆者が武蔵小杉のタワマンを買って後悔した理由もご紹介しました。
しかし、武蔵小杉のタワマンを購入して満足されている方も多くいます。
タワマンの購入は人生おける大きな決断の一つです。
筆者の経験をご紹介したことで、少しでもお役に立てたのであれば幸いです。