ハワイの不動産取引のフローを解説|売買契約締結から引き渡しまですべての流れをご紹介

日本国内の不動産売買においては、通常、売買契約の締結から物件の引き渡しまでの間に、ローンの審査手続きが行われます。

しかしながら、ハワイの不動産取引では、現金での購入であっても、売買契約の締結から物件の引き渡しまでに、さまざまな手続きが必要です。

本記事では、ハワイの不動産取引における売買契約から引き渡しまでのプロセスを詳しく解説します。

また、国内との異なる点にも焦点を当て、皆様にとって有益な情報を提供しますので、ぜひご参考にしてください。

ハワイの不動産取引(売買手続き)のフロー

ハワイの不動産取引においては、売買契約の締結から引き渡し(クロージング)までに、おおまかに8つのステップがあります。

現金での購入の場合、平均で30〜45日で物件の引き渡しが可能です。

一方、ローンを利用する場合は、金融機関の審査に時間がかかるため、約60日の期間が必要です。

特に「エスクローアカウント作成」や「インスペクション」「公証手続き」は、ハワイの不動産取引独自の商習慣ですので、事前に把握しておくことが重要です。

以下では、ハワイの不動産契約手続きを詳しくご紹介します。

これらのステップを理解し、円滑な取引を進めましょう。

売買契約書締結

国内では、物件を決めたら不動産会社に購入申込書を提出し、不動産会社を通じて売主と交渉します。

条件に合わず売主が買主に提示する場合も、不動産会社を通じて口頭で伝えられます。

このやり取りを繰り返し、折衷案を見つけることで、ほとんどの場合、売買契約が成立します。

しかし、ハワイの不動産売買では異なります。

購入する物件を決めたら、売買契約書に希望条件を記載し、不動産会社を通じて売主と交渉します。

売主からの条件提示は、書面であるカウンターオファーで行われます。

口頭でのやり取りは禁止されており、全ての条件は書面で交渉されます。

その後、買主が再度希望条件を提示する場合は、再カウンターオファーを提出します。

カウンターオファーのやり取りの末、お互いが納得すれば、売買契約が成立します。

このような詳細な手続きがトラブルを回避し、円滑な取引を実現します。

現況有姿契約書と双方代理契約書

売買契約書やカウンターオファーに記載された条件に同意し、サインを入れれば、売買契約が成立し、次の段階に進むことが可能です。

アメリカでは印鑑が一般的ではなく、サインが法的な同意を示す方法として使用されます。

近年では、パソコンやスマートフォンを使ってオンラインで契約書に電子署名する電子契約も普及しています。

売買契約締結時に必要な書類はいくつかありますが、「現況有姿契約書」と「双方代理契約書」は特に重要です。

現況有姿契約書は、物件の現在の状態をそのまま取引することを定めたものです。

国内においても、中古不動産の売買においては、主要設備のトラブルやエアコン、キッチン機器の故障を除き、細かい傷や汚れなどの経年劣化は、現状のままで引き渡しとなります。

ハワイでもこの形式が一般的であり、売主と買主が双方の同意を得た後、サインをすることになります。

同様に、売主と買主が同じ不動産会社を通じて売買契約を行う場合、双方代理契約書に両者の同意が必要です。

これらの書類は契約締結の際に注意深く確認されるべきです。

エスクローアカウント作成

エスクローは、ハワイ州政府によって不動産の証書受託業務を行う第三者機関です。

このシステムは100年以上の歴史があり、売主と買主の間で売買代金の受け渡しや権利証の作成、名義変更の手続きを効率的に担当します。

国内の不動産売買では、買主から売主へ手付金や中間金、残代金が直接支払われ、引き渡し時の固定資産税や管理費の清算は不動産会社が行います。

名義変更は司法書士が行います。

しかし、ハワイの不動産取引では、エスクローの利用が必須です。

エスクローは、売主と買主の両者にとってメリットがあります。

買主にとっては、名義変更が行われていない段階で売主に先払いすることは不安ですが、買主が支払ったお金は一時的にエスクローに保管され、名義変更が完了した後に売主への支払いが実行されます。

売主にとっても、お金を受け取る前に名義を変更することは不安ですが、エスクローに買主からの入金が確認されれば、安心して名義変更手続きを進めることができます。

ハワイの不動産取引では、エスクロー会社が不可欠で、売主と買主の直接のやり取りはありません。

取引が完了するまでの全てのプロセスをエスクローが管理し、安心して取引を進めることができます。

エスクロー会社が行う不動産取引に関わる業務は以下の通りです。

  • 売買に関連する必要経費の計算、支払業務
  • 売主と買主の間に生じる固定資産税や管理費などの清算
  • 各不動産会社との円滑なコミュニケーション
  • 弁護士へ権利証の作成依頼
  • 登記書類の作成から登記の実行、名義変更まで一切の手続き

不動産会社は売主と買主の手続きをサポートしますが、エスクロー会社は取引の裏側でスムーズな引き渡しを確保するために様々な手続きを行います。

ちなみに、エスクロー会社が権利証や記録書類を作成する際には、売主と買主の両者の名義や住所などの個人情報を含む「エスクローオープニングインストラクションズ」と呼ばれる書類の記入が求められます。

また、法人が不動産を購入する場合は、登記簿謄本の英訳文や、会社の存続を証明する「Goodstanding」という書類や、取締役会での購入同意を示す「取締役会決議書」などの追加書類が必要です。

手付金入金

売買契約の条件によっては、契約締結後7日以内に手付金の支払いが求められることがあります。

通常、手付金は1万ドルから5万ドルの範囲で設定されており、小切手や海外送金を通じてエスクロー会社に支払われます。

海外送金の場合、着金までに1日から2日程度の時間がかかることが一般的です。

入金手続きは各銀行の支店から簡単に手続きが可能です。

なお、送金手数料は買主の負担となります。

各種書類授受

ハワイの不動産取引は、国内と比べて、売買契約の締結から引き渡しまでの間の手続きが複雑であることをご紹介しました。

その背景には、売主と買主の両者にサインしてもらう書類が多いからです。

以下は、頻繁に利用される書類の例ですが、契約の内容によってはさらに書類が増えることもあります。

  • 家具・備品リスト
    物件によっては家具や食器類なども売買価格に含まれており、それらもそのまま売主から買主へ引き渡しをされます。
    その際に具体的に何を引き渡すのかを細かく示した書類が「家具・備品リスト」になります。
    ホノルル不動産協会にて指定の書類が準備されているわけではないので、不動産会社によっても書式が異なり、細かく「スプーン4つ、お皿5枚」などと一つ一つの食器類まで細かく記載する不動産会社もあれば、「食器類」などと一括りにする大雑把な不動産会社もありますので、リストと一緒に引渡し家具の写真を撮影しておき、事前に家具類の不具合もないか確認しておくのがポイントです。
  • 売主開示情報書類
    売主開示情報書類は、売主が知りうる事実を買主に告知する書類になります。
    例えば売買物件で過去に火事や事故、漏水があった場合にそれを書面にて買主へアナウンスする必要があります。
    何か見えざる瑕疵がある場合、購入後に賃貸に出す際や次に売る場合にマイナス要因になりますので、不動産会社と一緒に細かく確認する必要があります。
  • コンドミニアム書類
    管理規約や総会議事録、竣工図面など物件により異なりますが、不動産会社が管理する各種書類を総称し、コンドミニアム書類と呼びます。
    全て英字になり、管理規約は100ページに及ぶものもありますので、読破するにはかなりの労力と時間を要しますが、売主から買主への受け渡しが必要になります。
    場合によっては弁護士に依頼し、レビューしてもらうのも一つでの手です。
  • レンタル契約書類
    売買物件が賃貸中の場合、現在住んでいる賃借人の内容や賃料、賃貸期間をレンタル契約書にて確認するために売主から買主へ交付されます。
    引渡し後に賃貸に出さず、自分で利用したいという買主にとって、賃貸内容は重要になりますので、主な契約内容を確認する必要があります。

これらの書類はすべて電子契約でオンライン上でサインが可能です。

買主が予期せぬ内容があった場合や、売主からの書類交付が売買契約書に記載された日付より遅れた場合、買主はそれらを理由に売買契約自体を取り消すことができます。

インスペクション

インスペクションは、不動産取引において重要な建物状況調査の一環です。

ハワイの不動産売買では、専門の検査員であるインスペクターが物件の主要設備を点検します。

エアコンや家電製品、ドアや窓の取り付けなど、細部まで確認し、物件の状態をチェックします。

一般的な契約書では、買主が不具合を発見した場合に売買契約をキャンセルできることもあります。

そのため、インスペクションは重要な分岐点となります。

インスペクションの費用は物件の広さや内容によって異なりますが、一般的には300ドルから1,000ドルです。

一般的にインスペクションの費用は買主が負担します。

また、ハワイの温暖な気候のため、築年数の古い物件はシロアリの被害を受けやすい傾向があります。

シロアリ検査の費用は約500ドルで、一般的に売主が負担します。

シロアリの被害があっても、専用の害虫駆除剤で対処できるため、安心して取引を進めることができますので、ご安心ください。

点検を実施するハワイのインスペクターは主にアメリカ人ですので、レポートは英文で提供されます。

公証手続き

アメリカでは、住民票や印鑑証明書などの公的書類が日本のように存在しないため、本人確認のためには公証人の前で公証手続きを行います。

公証は、権利証などの公的書類に署名をした者が本人であることを証明する手続きです。

不動産売買では、売主と買主の両者がこの手続きを行う必要があります。

日本国内で手続きする場合は、アメリカ大使館(または領事館)や、東京・神奈川・大阪などの地方公証役場で手続きが可能です。

ハワイでも、エスクロー会社や銀行、弁護士事務所などで手続きが行われます。

物件の引き渡しの際にハワイを訪れて、公証及び登記手続きを完了させることもできます。

残代金入金

引き渡し日の1週間前までに、残代金と購入費用をエスクロー会社に支払います。

アメリカの不動産取引では、仲介手数料は売主が負担するのが一般的ですので、購入者は仲介手数料を支払う必要はありません。

購入費用は通常、売買価格の1〜1.8%が相場で、日本と異なり費用が少なく購入することが可能です。(ローンを利用する場合は、別途ローン手数料が発生します。)

日本からの海外送金で残代金を支払う場合、資金が不足すると登記手続きが滞る可能性があります。

そのため、余裕を持った金額を送金することをお勧めします。

500ドルから1,000ドルの余剰分は登記完了後に返金されます。

余剰金は登記完了後にエスクロー会社から買主へ返金してもらうことができます。

引き渡し(クロージング)

手続きを完了すると、いよいよ引き渡し(クロージング)の時です。

引き渡しの2営業日前には、エスクロー会社が登記所に権利証と登記書類を提出しなければなりません。

そのため、必要な書類は引き渡しの日までに準備しておく必要があります。

引き渡し当日、登記所からエスクロー会社へ登記が完了したことを通知します。

エスクロー会社は売主の指定銀行口座へ売買代金を送金し、売買契約手続きが完了します。

権利証は日本と異なり、原本は登記所に保管されます。

買主には後日、エスクロー会社からコピーが郵送されます。

もし紛失した場合でも、エスクロー会社で新しい権利証を作成してもらえます。

まとめ

本記事では、ハワイの不動産取引の流れを詳しく解説しました。

国内の不動産売買とは異なり、多くの手続きが必要なため、引き渡しまでに時間がかかる場合があります。

特に「エスクローアカウント作成」や「インスペクション」「公証手続き」は、ハワイ独特のプロセスですので、初心者の方にとっては戸惑うこともあるかもしれません。

何かわからないことがあれば、不動産会社などの専門家に相談して、早めに解決するよう努めましょう。